おはようございます。まさきんです。
データ分析やアクセス解析の仕事について、「専門性の高い仕事なのか」という話題を、これまで何度も見聞きしてきました。
僕自身、この仕事を長く続けてきて感じているのは、必要なのは高度な統計や機械学習の知識そのものより、もっと別の力だということです。
分析担当者は「通訳者」であるべき
データ分析の役割は、非常に専門性が高いもの、というイメージを持たれがちです。ただ、以前『分析力を武器とする企業』という本を読んで考えたこととも重なりますが、個人的にはそう思っていません。
もちろん、高度な分析からビジネスの気づきを引き出せる人や、分析からデザイン・実装まで手を動かせる人もいます。ただ、そういう人はそれほど多くないと感じています。
多くの現場で本当に求められているのは、データという専門的な言葉を、ビジネスの言葉に翻訳する力ではないでしょうか。数字を眺めるだけでなく、それが意味することを、関係者に伝わる形に置き換える仕事です。
この「翻訳する」感覚は、仕事以外の数字にも使える気がしています。例えば毎月の通信費も、ただ眺めるだけでは意味が分かりません。
「便利な調べもの装置」で終わってしまう危うさ
分析組織が陥りやすい落とし穴として、ずっと気にかけていることがあります。それは、分析チームが単なる「調べもの窓口」になってしまうことです。
あの数字を出してほしい、この期間の推移を見せてほしい。そういった依頼はもちろん大切な仕事ですが、それだけで終わってしまうと、本来求められている「意思決定を助ける」という役割からは少しずれてしまいます。求められた数字をただ右から左に出すだけの存在になってしまうと、分析チームの価値はいつまでも「便利な調べもの係」の域を出ません。
とはいえ、僕はこの状態を頭ごなしに否定すべきだとも思っていません。最初の一歩としては、地道に調べものに応える組織であっても構わないと思っています。小さくても見える情報を増やし、その情報を周りに届け続けることでしか、次の信頼は積み上がっていかないからです。目指す姿からは目をそらさず、でも今できることを積み重ねていく。そのくらいの構えでちょうどいいのではないでしょうか。
ユーザーサイドと構築サイド、どちらに寄せるか
データに関わる仕事は、大きく二つの方向に分かれると感じています。ひとつは、出てきた数字を使う側。もうひとつは、データを取得・整備する構築側です。
使う側であれば、CRM的な分析やユーザー教育、レコメンドの設計などに広がります。構築側であれば、データ要件の設計や実装、データ基盤の整備まで含まれます。
キャリアを考えるうえでは、このどちらに軸足を置くかで、伸ばすべきスキルがかなり変わってくると思います。以前「プロダクトマネージャー」という仕事について考えたときにも近い葛藤を感じましたが、正直に言うと、僕自身も、このどちらに軸足を置くべきか、今もはっきり答えを出しきれていない部分があります。ユーザーサイドから始めて、設計・実装・施策の間を行ったり来たりしてきた身としては、構築サイドの力をもっと伸ばしたいという気持ちと、今の立ち位置への迷いが、正直なところ今でも同居しています。
生成AIの時代に、通訳力の比重はむしろ増している
今は生成AIによって、SQLを書いたり、ダッシュボードを作ったりする作業は、以前より簡単にできるようになりました。
最近読んだ議論では、この変化を「分析力」から「勝ち筋を導き出す力」への転換として語られていました。データの加工や可視化、モデル選定といった定型作業がAIに任せられるようになった分、KPIを見つけ出す力や、そもそも「何を問うべきか」を設定する仮説立案の力の重みが増している、という見立てです。別の議論では、データサイエンティストの役割が「異分野の知識を橋渡しする役」「戦略的に問いを立てる役」「分析結果を経営判断につなげるストーリーテラー」という三つの方向に広がっていく、とも語られていました。
つまり、その分「何を聞くか」「出てきた数字をどう解釈してビジネスにつなげるか」という部分の重みは、むしろ増しているのではないでしょうか。ツールが賢くなるほど、問いを立てる力と、答えを翻訳する力の差が、そのまま成果の差になっていく気がします。単なる調べもの装置で終わるか、翻訳者として意思決定に食い込めるかの分かれ目も、結局はこの部分にあるのだと思います。
実務でこの力を鍛えるとしたら、僕は「数字を見た人に、次に何をしてほしいのか」を先に言語化してから分析に入る、という順番を意識するようにしています。数字を出してから解釈を考えるのではなく、伝えたい結論の仮説を先に持ってからデータに向き合う。この順番の違いだけでも、通訳者としてのアウトプットの質はかなり変わってくると感じています。
分析の民主化、という言い方もよく見かけるようになりました。生成AIによって、専門知識がなくても自分でデータに問いかけられる人が増えたことで、以前は分析チームだけが持っていた「調べる力」そのものの希少性は下がっています。だからこそ逆に、出てきた答えをどう解釈し、次のアクションにどう結びつけるかという、通訳者としての付加価値のほうが際立つようになってきた、というのが実感です。
現場のメンバー全員がある程度データに触れられるようになった今だからこそ、専門用語をかみ砕いて説明する役割は、むしろ社内のあちこちに分散して求められるようになっているとも感じます。分析チームだけが通訳者であればいい時代は、少しずつ終わりに近づいているのかもしれません。
まとめ
技術やツールは時代とともに変わっていきます。ただ、データとビジネスの間に立つ「通訳者」としての役割の本質は、あまり変わっていないと感じています。
そういえば、自分の身の回りの数字は案外ちゃんと見ていないものだと思います。まずは毎月の通信費あたりから、自分の手で数字を見直してみようと思います。
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