おはようございます。まさきんです。
昔書いたブログを読み返していたら、CRMについてのメモが出てきました。2016年、当時読んだ本をきっかけに書いたものです。10年近く経った今も考え方は古びていない気がします。なので、あらためて書き直してみます。
CRMという言葉が指す範囲は広すぎる
CRMや顧客ロイヤルティという言葉は、マーケティングの現場でよく使われます。ただ、指している範囲がかなり広いのが気になります。
「おもてなしの心が大切」という精神論として語られることもあります。かと思えば、リターゲティング広告の設定手順として語られることもあります。同じ言葉なのに、扱っている階層がまるで違うのです。「顧客体験の向上」を掲げていたプロジェクトがあったとします。蓋を開けると、特定セグメントへの広告出し分けの話だけだった。そんなことも珍しくありません。
範囲が広いこと自体は悪くありません。ただ、それは少し危うい状態でもあります。定義があいまいなまま進めると、施策の評価もずれてしまいます。開封率やクリック率、直近のコンバージョン数といった数字はすぐ追えます。追いやすい指標だけで良し悪しを判断しがちになります。その裏側で、気づかないうちに顧客との関係を削っていることもあるかもしれません。
「悪い売上」とは何か
僕は、CRMの本質は「悪い売上」を生まないことだと思っています。悪い売上とは目先の数字は立つものの、長期の信頼を犠牲にする売上のことです。
例えば、値引きを前面に出した一回限りの購入です。安いときにしか買わない習慣を、こちらから顧客に教え込んでいるようなものかもしれません。セール依存の顧客ばかり増えても、通常価格での売上にはつながりにくいものです。
過剰なアップセルも同じだと思います。必要以上の機能やプランを勧めた結果、返品やクレームにつながることもあります。最終的には解約という形で戻ってくるのではないでしょうか。カゴ落ちフォローや休眠復帰といったメールマーケティングの定番シナリオでも、値引きクーポンを送り続けた結果、開封されるのは値引きメールのときだけになりがちです。似た構図だと思います。
こうした売上は、短期のKPIには乗ります。ただ、顧客生涯価値の視点だとマイナスになりがちです。一件あたりの利益は、長く付き合ってくれる顧客のほうが大きくなりやすいものです。
実際に「生まない」ためにできること
悪い売上を避けるという視点で見ると、実務でできることはいろいろあります。
一つは、サブスクリプションの解約をわかりやすくすることです。解約ボタンをわざと見つけにくくする設計は、短期的には解約率を下げるかもしれません。ただ、無理やり引き止められた顧客は戻ってこないでしょう。日本でも2022年の法改正で、サブスクの解約導線をわかりにくくする設計への規制が強まりました。世の中の期待水準そのものが、上がってきているのだと思います。
もう一つは、購入前に製品の限界を伝えることです。「この用途には向いていません」と先に言うのは勇気がいる判断だと思います。ただ、購入後に気づかれるより信頼を守れるのではないでしょうか。レビュー(口コミ)が持つ力を考えると、悪く書かれるより最初から正直に伝えるほうがいいと思います。結局はそのほうが評判を守ることにつながる気がします。
どちらも、短期の売上だけを見れば損に見える判断です。長い目で見れば、これこそが「良い売上」を積み重ねる方法なのだと思います。
一冊の本が理論武装になった
当時、こうした考えを整理するために読んだ本があります。遠藤直紀さんと武井由紀子さんの『売上につながる「顧客ロイヤルティ戦略」入門』です。
この本を通じて、僕の中で腹落ちしたことがあります。顧客ロイヤルティとは、お得意様になってもらうという考え方そのものです。商売のいちばん基本的な発想だということです。
小売やサービス業では、昔から当たり前のように行われてきたことです。事業の規模が大きくなるほど、担当も分業されていきます。すると、この基本が見えにくくなっていくのだと思います。CRMという横文字のせいで、かえって話がややこしくなっている面もあるのかもしれません。
本書は、顧客との関係を数字で捉え直す枠組みを示してくれます。ただ、根っこにあるのは特別な理論ではないとも教えてくれます。売上や来店回数だけでなく、離脱しそうな兆しをどう早めにつかむか。数字だけでは測りきれない満足度を、どう補って見るか。そうした問いへの向き合い方が、丁寧に整理されている本だと思います。目の前の一人に喜んでもらう、その積み重ねだという話です。当たり前の話に、あらためて立ち返らせてくれる一冊でした。
家計にもそのまま当てはまる話
ここまで書いてきて、これは仕事の話だけではないと気づきました。自分の消費行動にも、同じ視点が使えると思います。
家にある使っていないサブスクや、なんとなく続けている月額サービスです。最初の勧誘は魅力的でも、あとから見ると「悪い買い物」だったということはないでしょうか。ジムの会費や動画配信の契約も、気づけばそうなっていることがあります。
固定費を見直す基準は、案外シンプルなのかもしれません。「悪い売上を生まない」相手かどうかを見るという基準です。解約をわかりやすくしている会社は、それだけで少し信頼できる気がします。逆に、やめにくさで引き止めようとする会社もあります。そういう相手とは、距離を置きたくなります。
携帯電話の料金プランも、そのひとつかもしれません。契約や乗り換えの手続きがわかりやすい相手かどうか、一度見てみるのはいかがでしょうか。
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